S E R I ま ん す り ー
2001.11月号 要旨
特集:静岡県における「モノづくり空洞化」の現状
- わが国の閉塞感が一段と強まっているが、その構造的な要因として、
安価な輸入品の増加や海外現地生産化による輸出代替などを原因と
する「モノ作り空洞化」の進行があり、大いに懸念される状況となっている。
- 国内有数の“モノづくり県”である静岡県においても、@アジア諸国から
の安価な輸入品の流入による国内市場シェアの低下(繊維業界)、A技
術指導等の成果であるアジア諸国の技術力の向上が誘引する、さらなる
現地生産化(電気機械業界)、Bユーザー業界の空洞化に伴う国内需要
の減少(白板紙業界)、といった形で「モノづくり空洞化」が進行しており、
これまで静岡県経済を支えてきた県内企業・事業所の転・廃業や生産拠
点の統廃合が相次ぐなど、マイナス面での影響が表面化している。
- 今後も、わが国の高コスト構造が改善されない限り、量産品を中心に「モ
ノづくり空洞化」は一段と進むものと考えられる。その中で、行政では雇用
面を中心とした空洞化対策を講じ始めているが、本県が空洞化を克服して
いくためには、空洞化の影響を補う新事業の創出や起業に、果敢に挑戦し
ていく気概あふれる経営者や起業家が待望される。
調査:業態分化が進むビジネスホテル業界
- ビジネスホテルの需要量を測る目安となる出張宿泊数は、景気低迷が続く
中でも堅調に推移しているが、企業の出張経費削減などの影響で、客室料
金の水準は低下している。一方で、チェーン展開や異業種企業の参入により、
低価格ニーズをとらえた新規開業ホテルが増加し、競争が激化してきている。
- ホテルは、宴会場などの付帯設備の機能や施設の雰囲気などにより、「高級
ホテル」「シティホテル」「ビジネスホテル」等に分類されるが、最近では、宿泊
にさらに特化した「バジェットホテル」や、都市型観光にも対応した「ビジネス・
エグゼクティブ」ホテルが登場している。
- こうした新たに登場した業態のホテルでは、付帯機能を絞り込むことによって
低価格を実現し、高い稼働率を達成している。一方、既存のビジネスホテルに
おいても、インターネットを活用した宿泊予約や館内の情報化など、効率化、差
別化に取り組んでいる。
- ビジネスホテルにとっては、固定客が重要であり、今後、こうした固定客の支持
を得ていくには、単に従来のサービスの見直しや合理化を進めるのではなく、改
めて、顧客分析に工夫を凝らすことが求められる。
2001.12月号 要旨
特集:静岡県のIT関連サービス業の集積状況を探る
- 景気低迷が長引く中にあって、IT(情報技術)関連サービス業が増加を続けている。
これは、ソフトウエア開発や情報処理サービス業といった中心業種は微増の状況にあるのに対して、ホームページ作成などのインターネット関連サービス業が急増しているためである。
- IT関連サービス業は、静岡県内では、静岡市、浜松市、沼津市に一定の集積が見られ、特に静岡市では、駅周辺への立地が多い。これは、顧客訪問や通勤押しやすさが立地要件となっているためとみられるが、浜松市や沼津市では、顧客企業の立地とも関連し、車での活動に便利な郊外部での集積もみられる。
- これらの3都市に立地するIT関連サービス業者に対するアンケートから、その業務内容をみると、主体のソフト開発では地域の産業構造を反映した傾向が見られ、地域内からの受注が中心となっている。また、ホームページ作成などインターネット関連サービスを提供する事業者も多いが、これを本業とする事業者はわずかなようである。
- IT関連サービス業は、地域産業の高度化に寄与することが期待され、その育成・集積を図る意義は大きい。産学官が連携して、異業種交流の仕組みづくりやIT関連サービス業者が活動しやすい環境整備を行うことで、新規創業や新製品、ビジネスモデルが連綿と誕生するような土壌を作り、競争力の強い事業者の集積が形成されることを期待する。
調査:新サービス・業態開発を進める理美容業界
- 日常生活に密着した業界である理美容業は、近年、いわゆる「カリスマ美容師」への憧れや、雇用環境の悪化により手に職をつけようとする若者が増えていることから、人気職種の一つに数えられている。
- しかし、理美容業界も、同業組合による料金・営業時間等の統制の禁止、外資系企業や大手資本の参入・FC展開による企業化の動き、さらには、美容ニーズの高まりに伴う免許取得者の増加などがみられ、一部の地域では過当競争を招いている。
- そうした中、顧客の多様なニーズに対応して他店との差別化を図るため、さまざまな新サービスや新業態が登場している。
- 競合が激化する理美容業界において、今後、個々の理美容店が生き残っていくためには、立地条件と顧客層を的確に把握し、得意分野を確立した上で、それを積極的に情報発信することによって、いかに多くの「ファン」に指示されるかがカギとなる。
[PR]動画